メガバンクの自民党政治献金問題を考える
 
         
   
【戻る】
   
      安倍総理(自民党総裁)は、国会閉会日の12月19日総理官邸で記者会見し、「主要銀行から自民党が政治献金を受け取ることは国民の理解を得ることができない」と語り、大手銀行からの政治献金を当面、受けない考えを表明した。
  これは、公的資金完済で再開の環境が整ったとみた三菱東京UFJ銀行が、政治献金の年内再開に向け最終調整に入り、12月下旬に開かれる取締役会で正式に決定しようとした流れを受けてのものである。献金額は、3000万円を軸に検討されていた。大手銀行は公的資金注入を受けた平成10年以降は献金を取りやめており、再開すれば9年ぶりとなる予定であった。
  最大手の三菱東京UFJが再開方針を固めたことで、みずほフィナンシャルグループも年内を含めた再開の検討を本格化するとみられていた。一方、三井住友銀行も、決定は来年以降に先送りするものの追随する構えであった。
  自民党本部の毎年の政治資金収支報告書によると、3メガバンクの融資残高は02年末で約33億円だったが、05年末には約7億円減の約26億円になった。一方、03年春の経営危機で約2兆円の公的資金が投入された りそなは02年末(当時は大和銀行)の残高約5億円から、05年末には約54億円まで急増させている。
  自民党に対する大手銀行の融資残高が05年末で約80億円に達し、3年間で倍増したことになる。要するに03年春に実質国有化された りそな銀行が同期間に融資残高を10倍以上に急増させたためだが、三菱東京UFJなど3メガバンクは融資を圧縮しており、自民党への3メガバンクの貸付金を実質国有化された りそなHDが肩代わりした構図が見えてくる。
  大手銀行は93年の総選挙の際、当時の都銀8行が自民党向けに総額100億円の協調融資を実施した。将来の企業献金を返済にあてることが融資条件で、当時の経団連の平岩会長が「経団連が返済に協力する」との念書を銀行側に示したとされている。
  大手銀行は、国から資本注入を受けた98年以降、政治献金を中止していたが、三菱東京UFJなど3メガバンクは今年10月までに公的資金の返済を完了した。これを受けて、日本経団連は同月、全銀協を通じて各行に献金再開を要請していたとされる。
  しかし、メガバンクは史上空前の好業績にもかかわらず政府の方針により、預金金利や配当の水準が低いうえ、過去の不良債権処理に伴う税務上の欠損金と相殺され未だに法人税を納めていない。これだけ、稼いでも税金も納めず、挙句に政治献金をしようというのである。その間、メガバンクの従業員は大リストラを余儀なくされ、世の中の中小零細企業は不良債権処理の名の下に「貸し剥がし」が行われ多くの企業が倒産し、自殺者も続出した。一方では、クリーンな政治をするためという大儀名文で国民の血税を、福祉や教育に回す分を減らし、政党交付金に相当額充てることとしたが、国民に取ってはやはり疑問が残る。
  この一連の流れは、何を意味するのだろうか。要するに、多額の不良債権問題により金融危機にまでに及んだわが国の金融界を救うという名目で、何十兆円にも及ぶ国民の血税を投入する政策を行った政権政党に対して、大手メガバンクは一時的に融資を抑え、国有化された りそなHDがまるで自民党に私物化されたようにその間の融資を受け持ち、自分たちの不良債権が処理され空前の利益を生み出すようになると、今度は挙って税金も納めない内に政治献金を行おうとした。目的はこの献金を呼び水にして経済界からの政治献金の試金石とし、必ずしも返済が確実視されない政権政党である自民党からの返済原資をつくろうとしていたのである。
  この流れから、りそなの実質国有化も含め、自民党とメガバンク及び経済界の癒着は明白である。別の言い方をすれば、談合の臭いさえも感じさせる。また、この巨額な借入金に対して果たして自民党には、正常な返済能力や担保価値となるものはあるのだろうか。もし、自民党が選挙で大敗して、政権から大きく離れるような事態となったら、この融資は不良債権化しないのか。政治は、一寸先は闇ではないのか。
  また、これがもし融資という名のもとの献金(に近い性格のもの)であれば、大きな意味での政治資金規正法違反ではないのか。改めて、一考すべき事柄であろう。
  経済界主導の余りにあからさまな手法に、さすがに安部政権も現段階では「国民の理解が得られない」という理由でメガバンクからの献金を辞退したが、根底に流れているものがある限り、形を変えても間違いなく同様の流れ・同様の行為は行われるであろう。
  以前から「表の銀行、裏の証券」と言われ政権政党・自民党に対する政治献金では、大手銀行は常に主導権を握ろうとしてきた。ここ数年来、日本の社会・経済はリストラと構造改革の名の下に、大手資本だけが生き残り、ニートやフリーターが増大する今までに無い格差社会が構築された。この一連の流れは、もちろん米国の年次要望書に基づくところが大きいが、それに乗った日本の大手資本と政権政党である自民党が、自分達の保全のために演出した政策であるように思えてならない。
  自由民主党は、わが国の政権を長きに渡って担っている政党である。自身の保全ばかりに奔走することなく、米国および国内の大資本の横暴に屈することなく、飽く迄もフェアーな態度で、我々国民の大多数が理解し納得出来る政策で、わが国の社会を構築するために全力を傾注することを熱望する。

 
   
 
【前へ】 【次へ】 【トップへ】