急がれるワーキングプアー対策と公共事業

 
         
   
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  昨今、ワーキングプアーという言葉をよく耳にする。これは、仕事にはついており毎日働いているが、貧困生活・貧困家庭。働けど働けど貯蓄も出来ないし、生活するだけで精一杯な状態の人々を意味していて、その急増が現在大きな社会問題になっている。
  ワーキングプアーは、米国から入って来た言葉であるが、日本でもこういう生活を強いられる人々が昔からいたのは間違いない。ワーキングプアーな家庭で育つと子供もまたワーキングプアーになりやすい。やはり昔から富裕層の家庭はそれだけ余裕があるから、教育費も多くつぎ込める。私立の幼稚園から始まり、小学校、中学校、高校、大学に行かせられる。また、教育費をかければ国立大学にも行かせて高等教育が受けさせられる。一方、ワーキングプアーや余裕のない家庭で育つと、公立の学校で普通以下の生活を強いられ、早めに就職して、低賃金で働き、ワーキングプアーな状態になる。
  全てではないが、今までの日本のワーキングプアーはこんな形で引き継がれて来たものが多かった。しかし、昨今のワーキングプアーという言葉には別の意味が入ってきた。というよりも今までとは別のワーキングプアーが出現したといっても良いであろう。
  日本政府が米国の年次要望書に基づく政策を取り続け、自由化や規制緩和ばかりを進めた結果により、日本の社会全体から正社員が減り派遣労働者が急増しリストラも進行している。確かに、無理やりな景気底上げ政策により、大都市圏の景気は良くなったようにみえるが、それにも増して地方の衰退は著しい。ワーキングプアーの増加は、少し時間が経てば企業の生産性にも影響を及ぼすのは必須である。今までに増して、年収300万円以下の労働者が急増するであろう。派遣社員では、年収300万円が限界だしその中から国民健康保険や国民年金も捻出しなければならない厳しい現状がある。ワーキングプアーな人々の日本人に占める割合が急増し、社会問題化しているのである。また、現在のワーキングプアーと言われる人々には、独身が多いのも一つの大きな特徴である。
  11月7日に行なわれた米国の中間選挙では、12年ぶりに上下両院共で民主党が過半数を獲得した。これは、米国でもテロ対策を旗印に軍事費ばかりに予算を配分してきたブッシュ共和党の政策に米国民がNOを突きつけ、国内の福祉や社会保障の問題に政策を転換するように要求した現われだと評されている。
  要するに、米国民の財布の中にもお金が少なくなりワーキングプアー対策を要求したことを意味する。

  現在の日本の業界の中で、特に建設業がワーキングプアー化しているように思えてならない。仕事は無くなる訳ではないが、いくら一生懸命働いても公共事業費の大幅な削減とそれに伴う低価格競争では、生きてゆくのも儘ならず、働けど働けど楽にならないという話しを良く聞く。
  殆どの中小の建設会社は、受注量が以前の7割位で受注金額も7割位になったため、70%×70%で49%、こんな形で売上が以前の半分以下の会社が多く出現している。もちろん、そこで働く労働者が豊かになる訳は無く、正規社員であってもワーキングプアー化しかねないのが現実である。
  いつの時代もそうであるが、公共事業に携わる業界というのは民間の流れから少し遅れた波動に置かれるものである。民需が上り調子の時には遅れをとり、民需がピークを過ぎたくらいの頃から、そんなに長続きはしないが幾らか上向きの波動が訪れる。 一方、悪い方に向かう時はトコトン悪いところまで行かないと中々反転しないのも特徴である。しかし、今回の公共事業系の建設業を襲った悪い方向への波動はいつ終点を迎えるかの予感さえも感じさせない凄まじい波動である。明らかに国策によって、建設業界を縮小させるのが目的であるなら、それも仕方ないと言ってしまえばそれまでであるが、長い間失業対策の受け皿とされてきた建設業が本当にそれでよいのか、建設業界を追い詰めることが国民のため、日本のために成るのか。国民のワーキングプアー化を加速させる大きな要因になってはいないのか。もう一度国のリーダーには、この問題を良く考えて欲しい。

  建設業界も含め、国を挙げてのワーキングプアー化では、少子化対策やイジメ自殺問題・凶悪犯罪の増加など山積する現代的な諸問題に、根本的な解決はない。それどころか新たな問題の続出と日本国の荒廃が多いに懸念される。教育基本法の改正は中長期的な対策である。短期的な対策としてワーキングプアーの増加をなんとしても阻止するべきである。そのためには、早急に政府が米国一辺倒の政策を転換し、失業対策・ワーキングプアー対策として公共事業の見直しを行うべきだと考えるが如何であろう。

   
 
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