政治とゴルフ
 
         
   
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  タイガー・ウッズ選手が7月24日全英オープンを制して間もない頃に、確か読売新聞であったと思うが、タイガー選手とその父去アール・ウッズ氏についての囲み記事が載っていた。
 その内容は、タイガー選手の亡き父アール氏の夢は、タイガー選手にゴルフを教えて世界チャンピオンにした後に、タイガー選手を政治の道に進ませアメリカ初の黒人大統領を誕生させることであった。それが、いつしか親子二人の共通の夢となっていったのでタイガー選手の悲しみは一入であったというような記事と記憶している。
  タイガー選手と彼の亡き父アール氏の逸話は、数多く伝えられている。アール氏は1932年3月カンザス州マンハッタンで生まれ、地元の大学を卒業後、米陸軍に入隊し、特殊部隊グリーンベレーの兵士として2度ベトナム戦争に従軍。この間にタイガー選手の母親と出会い結婚した。帰国後アール氏は自宅の車庫にゴルフ練習場を手作りし、タイガー選手に幼少時代からゴルフを教え込んだ。厳しい練習を課す一方で、宿題が終わらないうちは練習をさせないなど「タイガー選手をゴルファーである前に立派な人間に育てることを目標にした」という。
  アール氏の別の逸話では、タイガー選手に小さい頃から考えることをいっぱいさせたという。例えばタイガー選手が3歳位の頃に「三輪車が欲しい」と言い出した。しかし、アール氏はいいとも悪いとも言わず、ただ一言「自分で必要だと思うなら買いなさい」と言った。それに対しタイガー選手は「必要です」と答えて、アール氏は微笑んで三輪車を与えたという。普通に考えて3歳の子供に判断させるのはなかなか出来ないことであろう。
 5月3日に父アール氏を亡くしたタイガー選手は、悲しみにくれ2ヶ月ぶりに復帰した6月の全米オープンでは、メジャーでプロ初の予選落ちをした。しかし、7月の全英オープンでは、天国で見守る父のためにも雪辱を誓い、強いタイガー選手が戻ってきた。23年ぶりとなる全英オープン連覇・メジャー通算11勝を成し遂げると、その後メジャー通算12勝目となる全米プロゴルフ選手権を入れて出場試合連続の5連勝を打ち立てた。
  ゴルフというスポーツは、人間との闘いの前に自然との闘いがあり、いくら高度なテクニックを持っていても、なかなか勝ち続けることは至難のスポーツである。しかし、タイガー選手はそれをやり遂げた。実に賞賛すべきことであろう。 
  ゴルフは別名「紳士のスポーツ」と言われ、エチケットとマナーを非常に重要視するスポーツである。技術以前に、人間性とその時々の状況に対する判断力そして集中力が問われる競技でもある。そういう意味では、ゴルフをやられる方にはよくご理解いただけるであろうが、独特の競技であり気力・体力・判断力・技術力・実行力とそれを上回るフェアープレーの精神が要求されるスポーツでもある。
  そう考えたとき、この競技の本質は確かにそのまま政治の世界に活用出来るのではないか。もっというなら、今の政治家にもっとも要求されるものがゴルフという競技の本質の中に潜んでいるのではないか。
  もちろん、政治にはゴルフだけをやっていては到底培うことの出来ない、知識や経験が要求されることは言うまでも無い。しかし、タイガー選手のような強い意思と判断力を持っている人間が政治を学び、的確な判断と何よりも必要なフェアープレーの精神で国民のことを考えて政治を行えば、必ずや良い政治が実現出来そうな気がするのはなぜか。政治とゴルフを照らし合わせて考えた時に、現在の政治に欠けているものが何であるかを物語っているからではないのか。
  強い意志と精神力・技術力で勝ち続けるタイガー・ウッズ選手を応援するとともに、新聞に載っていたことが真実で去アール・ウッズ氏の意思を受け継いで、政治家を目指す気持ちが本当にあるなら、タイガー・ウッズ氏に更なる期待を寄せ、彼の人間としての一層の精進にエールを送りたいと思うが如何であろう。
   
 
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