「日本丸の進路」と「マスコミ報道のあり方」
 
         
   
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 総選挙が終わり連立与党が大勝して、なんと衆議院の3分の2を超える議席を獲得した。国会では83名におよぶ新人議員が誕生し、その影で野党や造反組みというレッテルを貼られた、今まで政治一筋にたたき上げてきた多くの実績ある代議士が議席を失い失職した。921日に召集された臨時国会の初日、予期せずして比例区で当選した自民党の新人議員の様子をマスコミ各社がTVで放映したが、映し出される「小泉チルドレン」「新人研修会」等の国会関連映像を見ていて、これが現在の日本国民の選択であり、我国の行方を託する国会の姿であると思うと、滑稽さとなんとも言えない失望を感じざるを得ない識者は数多くいたはずである。

 日本人の政治感覚の貧困さを嘆いても、それが現実であるのだから仕方があるまい。また、日本人はある流れが出来たときに行き着くところまで到達しなければ反転しない国民意識の性質・性格を持っているようである。

民主党は岡田代表が責任を取って退陣したのを受けて党首選を行い、新代表に前原誠二氏が就任した。43歳の新党首に期待したいところであるが、新党首の基本的な政治理念を考えたとき、「改憲」「労働組合批判」「アメリカ追随」等々自民党(小泉党)との相違点が一体何処にあるのか、全く分からない。それどころか、彼の政治家としての人脈を考えると安部晋三代議士を始めとする多くの自民党議員との密接な関係をはじめ、民主党内よりかえって自民党との関係の方が強いのではなかろうか。

 今の自民党は、もう以前の自民党ではなく小泉党である。小泉総理の就任以来の手法は、「改革」の名の下に民主党の政策を横取りして、自民党の政策であるかのように摩り替えることにより、民主党の野党としての存在感を削ぐことに終始してきた。また、一方ではアメリカの言いなりになってブッシュ政権を維持することに最大限の配慮を行い、この2点の基本政策を推し進めることにより政権維持を図ってきた。

 そう考えれば今回の選挙結果と民主党の新体制は、実質的には3分の2の与党どころかオール与党に近い選挙結果を生んだと言っても過言ではないであろう。また、それが現在の国民の審判であったと考えざるを得ない。

 日本の政治史上今回の選挙ほど、政治は国民の意思により決まると言うことを思い知らされた選挙は無かったのではなかろうか。加えて国民の政治感覚の貧困さも思い知らされる結果となったことは真に悲しむべき事実であるが‥

 

 総選挙の結果を受けた翌日から、マスコミ報道に多少の変化が生じ始めているように感じる。それまで、特に民放をはじめとするマスコミ各社は、アメリカからの大量の投資に押されて小泉政権維持を根強く支持する報道を繰り返し行なってきた。それが、今回の選挙結果を生む原動力となったと言っても決して過言ではない。

 しかし、今後この方針を続けて行くことが困難な程大勝した選挙結果を受けて、マスコミ各社も方針転向を余儀なくされてくるであろう。

 そもそもマスコミ本来の使命は、「政権を批判することを職とする」という言葉に代表されるように、その時の権力者が国を誤った方向に導かないように、絶えず監視してチェックすることにある。ところが、特にここ数年来のマスコミの姿勢は、視聴率と利益獲得競争に明け暮れるがために「真実」よりも「スポンサーの意向」に報道の基本を置く方針で進んで来ている。この傾向は、我国にとって非常に危険で大きな問題となっている。

 また、小泉政権はこうしたマスコミの傾向を非常に上手に利用して政権維持を図り、有権者を洗脳して今回の選挙結果を演出したと言っても過言ではない。

 しかし、この選挙結果によりやっとマスコミはこの行き過ぎた偏見に満ちた報道のあり方を自戒し、報道の原点に立ち返る見直しを打ち出さざるを得ないのではなかろうか。また国民は、今回の選挙結果を政治に対する姿勢を組み立て直す良いきっかけにすべきである。それが、日本人の行き着くところまで行かなければ反転しない国民意識の原点であり、またそうなって欲しいと強く待望する。

 小泉政権が時流に乗りその頂点を極めたことは、政権の是非は別にしてこの選挙結果により明白となった。しかし、いつの時代もそれはひとつの通過点にしか過ぎず、国は絶えず前進して行かなければならない。今は日本丸の船長は小泉純一郎かもしれないが、当然のことであるが、それは長い歴史の上では一瞬の通過点にしか過ぎない。

 繰り返しになるが、マスコミは飽く迄も是々非々で、政権のチェック機能を働かして、国民に間違わない我国の進路を選択させるために存在するべきである。今回の総選挙の様にアメリカの資本によりマスコミを取り入れて後ろ盾にした小泉劇場が国民を洗脳して大勝するような事例を二度と起こさせてはならない。

 今回の総選挙は、現在の我国において、「日本丸の進路」にマスコミが如何に大きな影響力を持ち、その対応が我国の進路を決定するということを今更ながらに思い知らされた選挙であった。また、この選挙結果はマスコミも国民も政治に対する姿勢と見識を新たにするべきことを物語ったと言えるであろう。

 

 

   
 
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