「日本国・民主政治の危機」を憂える
 
         
   
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 8月8日、参議院で「郵政民営化法案」が否決されたその日に、衆議院が解散され、8月30日公示・9月11日投票の総選挙が決定した。
 それ以後、マスコミでは「造反組」「刺客」「逆刺客」等の穏やかでない言葉が連日連呼され、国民の心中は何か凄く慌しく、まるで戦国時代か戦時中を彷彿される尋常でない日々が続いている様に感じられてならない。
 「郵政民営化法案」に反対票を投じた自民党代議士は、丸裸にされて自分達が生涯を掛けて築いてきたと自負する自民党を叩き出された。反対したことに対する言い分は、決して民営化が全てNOと言っている訳ではないのに‥
 小泉政権が行なったこの強引な手法は、これから何年も先にこの国を背負っていく若者達の心に少なからず悪影響を与えるであろう。

 確かに「郵政民営化方案」はかなりの時間を費やして国会で審議されたが、それでも国会の会期やサミットに出席する小泉総理の立場が優先されて与党内でも意見集約が出来ないうちに強行採決された感が歪めない。法案否決はその結果の出来事であり、本当に成立させたければ粘り強い勇気ある継続審議の道も残されていた筈である。今回の件に限らず、現政権になってからのわが国は是か否かの結論だけを急ぎ、権力の傘の元強硬な姿勢が目立ち何か淡白で、協調性や粘り強さが否定されているように感じるのは私だけなのであろうか。
 現在の日本における民主主義とは、一体なんなのであろう。わが国は言うまでも無く、権力の乱用を防ぎ、人民の政治的自由を保護するために国家権力を立法・司法・行政の相互に独立する3機関にゆだねる三権分立に基づく議院内閣制による議会制民主主義の国である。今回の参院での法案否決に対する、衆院の解散は今までに例が無いが、果たして総理大臣の「解散権の乱用」にはならないのであろうか。憲法学者の間でも意見が分かれるところらしい。
 一国の総理がただ強行に自分の意見だけを押し進めて、それに反対するものは強制排除するという強権政治は「日本の民主政治の危機」と言っても過言でない。
 小泉執行部は、今回の選挙を否決された郵政民営化の是非を国民に問う、国民投票的な選挙と勝手に位置づけ決行しようとしているが、果たして国民の側は素直にそう受け止められるのであろうか。私には、どうしても今の政権の独りよがりな強引な設定としか受け止められない。なぜなら、私の個人的な意見と今回の「郵政民営化法案」とは、かなりの部分で乖離しており、現段階では「郵政民営化」に賛成も反対も出来ないからだ。私の意見としては、当面郵便事業は現在の公社のまま存続させ、郵貯・簡保については段階的に時間をかけた民営化の方向を指示する。故に、民営化に賛成か反対かと問われれば全てNOではなく、方向性としては全てではないがYESだと言える。
 現政権は、そういう中庸的な賛成意見を持っている有権者が沢山いることをもっと理解するべきである。ただ単に、今の法案に対する是非だけで郵政民営化に対する是非を問われても返答の使用が無い国民が沢山いる筈である。
 郵政民営化の問題は、その位難題で一朝一夕に全ての人の意見を集約出来る問題ではない。例えば、「憲法改正法案」が出来た場合にそんなに簡単に意見集約が出来てすんなり可決するであろうか。法案には、その性格から直ぐに可決成立させて実行すべきものと、例え総理といえども一政治家の「信念」だけを押し通すのでなく、本当の意味で世の中の情勢を鑑みて強引にではなく、最大限の意見集約を図ってから実行していくべきものがあると思うが如何であろう。そんなに焦らなくても、小泉総理の掲げた基本理念は、遠からず現実のものとなるであろう。もう少し時間を掛けて議論して意見集約を図れば、間違いなくより良い仕組みが編み出されて、郵政の民営化は達成される筈である。 

 わが国の総理には、国のリーダーとしてもっと日本人と仲間を信頼して、何かというと争うのではなく、臨機応変に協調性と粘り強さも兼ね備えた「日本の民主主義を大切にする資質」を持って欲しいと心より切望する。

   
 
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