道路公団民営化への提言
 
         
   
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  いよいよ道路公団民営化が10月に迫っている。しかし実際には、民営化することだけが
目的の小泉流パフォーマンス政治の象徴のような事案のため、、結論を急ぎ過ぎ、まだま
だ付焼刃的な部分が多く残っていて、今後解決していかなければならない問題が山積し
ているようである。
 そこで、その矛盾点を整理して展望が持てる民間会社になるための方向性を探ってみた。

 まず、整理すべき事項を列挙すると以下のようなことが考えられる。 
@ 45年後に負債を返し終わった後、「債務返済機構」は解体されるが、民間会社はどの
  ようになるのか?
A 借入金40兆円(4公団合算)の中には、もちろん土地の購入代金も含まれているが、
 返済が終わったときに土地の資産額はどのように扱われるのか?
B 税金によって建設される高規格道路は、完成後国と地方自冶体が折半で維持・改修費
 用を負担することになっているが、誰が管理するのか?
C 公団収入の90%を優に超える料金収入からは、利益を出してはいけないという仕組み
 は、本業をないがしろにするものであり、誰が考えても普通の民間会社の粋を超えるもの
 であるが、果たしてそれをいつまで継続するのであろうか?

 

そこで、上記を踏まえて幾つかの方向性を探ってみることにする。
@ まず、国は債務返済機構に税金を投入して通行料金を下げるべきである。
   税金投入の理由は、一つには道路特定財源の揮発油税の内高速道路上で消費されて
  いる分が毎年約5,000億円程度ある。二つ目には、返済する借入金の中に含まれる
  土地の購入代金すな わち全線が完成した時点での高速道路の資産価値を全て公団
  の借金として扱うのは理屈に合わない。やはりこれは国の資産として考えるべきである。
   現行の考え方では公団の借入金は全て高速道路を利用する人の通行料で返済しよう
  としているが、返済が完済した結果残る資産の額の内せめて土地の価格に見合った
  額位は、税金投入を予め行って、高速道路の通行料金を下げることは理に適っている。
   税金を投入しないで、利用者の負担よって得た資産をを国が取得するのは、やはり
  不自然である。
A また、道路公団民営化の是非は別として、民営化が必須となった現在、よい機会で
  あるので、今後の高速道路のあり方と公平な受益者負担の関係をもう一度見直して、
  財源に応じた公平な税金投入を真剣に考える時である。
   道路特定財源も道路公団が今まで行って来た料金プール制も全て受益者負担の大原
  則に基づいている。この大方針は、現在の車社会を構築した源泉であり絶対に変更すべ
  きではない。特に、今まで高速道路ネットワーク構築のために利用者が払った代償は、
  正当に評価し将来に引き継ぐべきである。
B 投入する財源としては、筋論からすれば道路特定財源の揮発油税を高速道路で消費さ
  れた分に相当する額を投入するのが分かりやすいが、もう一つ今一番注目しておく必要
  がある税金として自動車重量税である。
   これは、「本四公団の債務の負担の軽減を図るため」に平成15年度から債務処理費と
  して使用されている。処理対象額は元利合計で約1兆4,700億円であり、15年度から
  19年度の5年間で処理される計画であったが、17年度までの3ヵ年度分の処理総額は
  約1兆円で、18年度も17年度と同じ規模で投 入されれば、1年早く完済してしまう。
   これを道路関係の非公共事業予算として債務返済機構に資金投入して、通行料金を
  下げるのに使用する方法もよいのではないか。
   その場合、本四公団への税金投入例から鑑みても、毎年3,500〜4,000億円程度
  の税金投入が可能であると考えられる。
C 次に、税金投入を行って通行料金のベースを下げた後、現行の全国一律の距離に
  比例した料金体制を見直し、民営化された会社毎の考え方やサービスの方法により
  新しい料金体制を構築してはどうであろうか。
   特に地方では、並行する国道が渋滞して高速道路の通行量をはるかに上回るケース
  は頻繁 に発生している。やはり高速道路を有効に活用して道路環境を改善するため
  には、利用者のニーズに合った利用しやすい料金設定を行うべきであろう。税金投入
  と利用しやすい通行料金設定の二重の対策をすれば、渋滞する一般道の車を高速
  道路に向けることは、決して難しくない。
   また、この政策により料金収入が増えた場合には、負債の返済額は上限を決め、
  それ以上の収入が上がった場合は会社の利益として計上することは民間会社として
  当然である。
   同時に、民間会社が余りに営利主義に走らないように、交通の安全確保と完成した
  構造物の価値を損なわないように維持・改修費用を必要以上に節減しないような枠組み
  を作ることも必要ではないか。
D 最後に45年後に借入金が完済した時点での民間会社のあり方について、民営化の
  時点である程度のモデルを持つことも必要である。
   特に高速道路料金についてであるが、飽く迄も受益者負担の大原則で高速道路を建設
  し利用し続けるのであるから、高速道路ネットワーク完成後もその精神を継続して、
  維持・改修費用については利用者負担とすることが理に適っているのではないか。
   民間会社は、高速道路と一般道の違いを道路の機能とサービスの違いで利用者に
  区分させ利用を選択させる。そして、維持・改修に要する料金のみを永続的に徴収する
  システムが良いと考えるが如何であろう。その場合、もちろん合理化を図りなるべく
  低料金での料金設定が必須である。
   またそのときは、もちろん高規格道路も含めて高速道路として扱うべきであろう。
  なぜなら、現行の計画では特に地方で、有料の高速道路と無料の高規格道路がまだら
  模様になり過ぎるのではないか。同じような高規格の道路で、有料と無料では始めから
  競争の原理が働かないし、無料の道路には維持・改修費として税金が投入され、余り
  にも国策としての不公平感が残る。
   それならば、建設には税金を投入しても、完成後は維持・管理を民間会社に委託して、
  高速道路を利用するには飽く迄も受益者負担の原則に則り、僅かな料金を徴収する
  方式の方が、国策としての公平感が保たれると考えるが如何であろうか。

 さらに一言付け加えれば、再来年度以降オーバーフローが予測されている道路特定財源             の問題が昨今にわかに話題となってきており、一般財源化や環境税化が議論されているが、道路特定財源のような目的税を他の目的に使用するなどということは言語道断である。               それならば税率を下げて、別の名目で税の徴収を行うのが筋であることは、今更論じる必要もない。今こそ、理不尽で一方的な民営化論議に終止符を打ち、わが国の高速道路のあり方を再度見直して、折角出きる新会社に公正で理に適った長期的な展望を持てる会社にする論議を始める時である。 

 


                               

   
 
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