予算配分の行方を憂える/今こそ公共事業を!
 
         
   
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ここ数年の国や特に地方自冶体の予算配分の変化には、どうしても首を傾げたくなる。

 どの官庁もここ数年来、公共事業費の減少は目を見張るばかりである。その反面、福祉や住民サービスの予算が増加している。まず、なぜこの現象が顕著に現れるかというと、 ひとつには現在の公共事業を否定する、言い換えればケインズ政策を否定する社会的な風潮や風評が一番影響している。そのために公共事業に予算付けしても票に繋がらないが、福祉や介護・住民サービスに予算を向けると票に繋がるといった議員側の目算も見え隠れするように思えてならない。

 もちろん、福祉や住民サービスを全て否定するつもりは全くないが、果たして財政が緊迫している現在、公共事業を切ってこの分野に税金を重点配分する傾向は正しいのであろうか。

 福祉や住民サービスは、それ自体は非常に好ましいことではあるが内需とリンクしない。また、日本人が昔から培ってきた家族主義を崩壊させようとしている部分もある。

 先に予算ありきだと、どこまでが家族や個人の責任で行うべきことで、どこからが社会や行政の責任なのかの線引きが非常に曖昧になってきている。予算付けしても、そこまで行政が税金を使って行うべきことか否かの垣根が非常に判りづらくなりつつある。福祉や住民サービスを手厚くすればするほど、税収は減り、税の投入は増えるであろう。

 一方、公共事業に税金を投入した場合、まず生活基盤や産業基盤の充実が計られ、裾野の広い波及効果により内需に貢献して、如いては税収増に貢献する。税収を考えた時、一時60兆円あった国の税収が、もう何年かすると半減して30兆円を割り込む危険性が出てきている。

 要するに、福祉や住民サービスでは税金がその行為自体に吸いこまれてしまうだけで、プライマリーバランスが回復する可能性は無いに等しい。

 一方、一時は「公共事業費を減らせば財政が再建される。財政悪化の諸悪の根源は建設を中心とした公共事業にあり。」とまで言われたが、それ以後公共事業費を激減させても一向に財政再建は成し遂げられていない。

 現在、金融機関をはじめとする一部の業種の成績が回復したのは、ただ単にリストラが進んだだけで、国全体の財政再建が進んでいる訳では決して無い。言い換えれば、財務筋主導のリストラを柱とした財政再建は、企業が行えば社員に国が行えば国民に痛みを与え、ただ単に企業や国の財政上の帳尻合わせを図るだけで、そこで生活する民の幸せには決して結びつかない。

 やはり今、日本に必要なのは内需の促進である。米国に中国に後進国に国連に世界中に貴重な税金をばら撒き過ぎずに、内需を促進するべき時である。今を逸したら、内需を促 す力自体が急速に衰えるであろう。

 今こそ早急に公共事業を否定する風潮を改め、本当の意味での財政再建に真剣に取り組む時である。現在、財政再建の起爆剤と成りえるのは公共事業しかない。福祉や住民サー ビスへの予算付けは、財政が再建されればなんの問題も無く必ず付いて来るであろう。

 改革派と言われる知事が務める地方が、全て下位に低迷する県民所得ランキングを見る度に、公共事業の必要性を痛感するのは私だけなのであろうか。
   
 
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