低価格入札の弊害
 
         
   
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  現在の公共事業は、低価格入札が大流行である。
 先日もある公共事業の入札で一日に6本の入札が行われたのだが、その全てが低価格入札と言えるものであった。ただ、実際には最低制限価格が設定されていないのでそのまま落札になったようであるが‥ 後で、発注者の設計価格と比較すると平均で約50%、低いものでは設計価格の40%弱で落札したようである。このケースに限らず、日々このような低価格での入札(たたきあい)は日本全国で行われどんどんエスカレートしているのが実態である。
 しかし、公共事業がこのような低下価格で取引されて本当によいのであろうか。発注者の設計価格と低価格入札の金額の差はいったい何なのであろうか。 公共事業の目的は、一体何処へ行ってしまったのであろうか。
  公共事業の目的は、国民の生活基盤や産業基盤となるための公共財である社会資本をつくり出し、その社会資本をメンテナンスしていくことにある。また、公共事業は好況過ぎて景気が過熱気味なら公共投資を抑制して景気を冷やし、不況なら積極化して有効需要を創出して景気浮揚を図るという政策的な景気調整の役割、経済全体の安定化機能を持っている。さらには、そこで使用される材料や原料・消費されるエネルギーをはじめとして、倉庫業・物流業等その周辺に及ぼす広範にわたる経済波及効果がある。同時に多くの雇用の受け皿となっており、関連産業も含めた雇用の波及効果は多大なものがある。
 こうした公共事業の目的や機能・効果は、前述した低価格入札を行ってもその目的を失わずにその役割を果たせるのであろうか。  いいえ決してこのような低価格な入札では、公共事業本来の目的を果たせられる訳がない。それどころか、工事の手抜きや安全面での危険をもはらんでいる筈である。 また、落札業者が赤字覚悟で何とか竣工したとしても度重なる低価格入札が行なわれれば、労務費の下落や外注費や仕入れ代金の不払い・不渡り如いては会社の倒産に繋がり経済が滞留してマイナスの経済波及に繋がるであろう。
 「建設業者の数が多すぎて需要と供給のバランスが崩れているのだから仕方が無い」と片付けてはいられない。それこそ、大切な税金を使っているのだから。
 この低価格入札の問題は、建設業界全体の問題として発注者も建設業者も英知を絞って取り組まなければならない問題である。

 

   
 
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