崩れ去る水道水の安全神話と(逆浸透膜式)浄水器

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諸外国に比べ、日本の水道水(上水道)は安全であると考えられてきました。しかし、その安全神話が今崩れ去ろうとしています。

東日本大震災の津波の被害により、福島第一・第二原子力発電所が被災し、各地で放射能汚染水が検出され、一挙に水道水の安全性が社会的問題になりました。しかし、水道水の問題はこの放射能汚染水だけなのでしょうか。これを機会に世界一安全だと言われている、日本の水道行政の歴史と現況を紐解き、国民一人一人がどうするべきかを考えてみましょう。


日本の水道行政は幕末から明治期にかけて渡来した細菌性感染との戦いでした。コレラ、赤痢、チフスなど外国人によってもたらされた被害が全国規模で広がりました。このため明治政府は、日本の浄水機能を欧米式の近代的な「急速ろ過方式」の浄水機能に高度化することを行い、細菌性感染症の克服に成功しました。この「急速ろ過方式」の浄水機能に殺菌剤として「塩素」を投入する方式が採用されました。その結果、日本では途上国の多くの死亡原因であるコレラ、赤痢などの細菌性感染症被害が皆無になりました。このことにより日本では「塩素信仰」が生まれることとなります。

この「塩素信仰」は水道水の安全確保を目指してきた厚生省にとって絶大でありました。ところがその後、その塩素が効かない病原性微生物が発見された事実と、水道原水に投入された塩素が極めて有害性の強い化学物質を生成する事実が明らかにされたことから「塩素信仰」が大きく崩れて行きます。水道原水に細菌用に投入された塩素が副生成物として極めて発癌性の高い有機化合物である「トリハロメタン」を生成する事実が公表されたのです。水道原水に投入された塩素が水道原水に含まれている有機物と化学反応を起こし、癌を多発させるクロロホルムなど人体に危険な化学物質を生成するメカニズムが公表され、世界に衝撃を与えました。

日本の水道普及率は、98%と先進国随一です。水系感染症が極度に低いのは、明治政府が導入した水道行政が当初優れていたからだけではなく、日本の恵まれた自然環境に負うところが大きいと考えられます。日本は島国であるため河川の長さが短く、6月の梅雨、秋の台風、冬の降雪など四季折々に豊富な雨に恵まれ、その急激な山岳地帯に降った雨は、たった3日で海に流れ込みます。この自然水の循環に恵まれている点が、逆に日本の水道水の「安全対策」が欧米の水道行政に大きく遅れた原因の一つであると言えます。

その後のわが国の水道水の安全神話を崩壊に導く要因として、「鉛水道管問題」「鉛水道管のアスベストコーティング問題」「ノロウィルス問題」が挙げられます。

まず、「鉛水道管」ですが、鉛は安価で加工がしやすい為、古くから水道管の主流を占めてきました。ところが、1970年代に入って欧米諸国で鉛の人体への重大な悪影響が指摘され始めます。鉛水道管の鉛が水道水中に溶出し、その水を飲んだ場合、脳の機能低下をもたらすと警告されたのです。このためアメリカではただちに鉛水道管の使用を禁止、製造・販売は罰則付きで禁止されました。

だが日本の対応は遅れ、1987年に「通達」で鉛水道管の使用制限処置を講じただけです。実際の水道行政をする地方自治では全国規模で鉛水道管の撤去がまだ続いています。
問題は水道管の公共部門の撤去は続いていても家庭敷地内の鉛水道管はそのまま使われていることです。厚生労働省は鉛の害を国民へ周知徹底していません。なにしろ、家庭敷地内での鉛水道管の普及度は異常な程です。ある調査によると、「全国世帯の5分の1に当たる852万世帯で鉛水道管が使用されている」ことが明らかになりました。これは驚くべき数字です。平均一家4人家族とした場合、日本人の3368万人が常に「鉛入りの水道水を飲んでいる」ことになります。この家庭内敷地内の鉛水道管はほとんど取り替えられていません。厚生労働省は、鉛の害とともに、家庭敷地内の鉛水道管の実態を国民に周知徹底して来ていません。これは行政官庁として、由々しき問題です。

そしてさらに問題があるのはアスベスト水道管です。このアスベストは価格が安価であるうえ、水道管内部の水による鉛の酸化を防ぐなどの優れた物理的特性があるため、鉛水管内部をアスベストでコーティングすることが広く、行われてきました。1950年JIS規格設定に伴い、全国規模で鉛水道管の内部をコーティングしたアスベスト水道管が大量に使われるようになりました。また水道管はもとより防火耐服、スレート屋根、タイル建材、絶縁体、など建設素材を中心に3000種類を超える多くの領域で使われ始めました。しかし、周知のように、1985年に発癌性物質であることが明らかになって以後、生産は完全に停止されています。

アスベスト被害の危険性を十分過ぎる程、認識している厚生労働省が何故水道管に使われているアスベスト問題を国民に警告してこなかったのでしょうか。アスベストの発癌性についてはアスベスト粉塵の長期間吸引が悪性腫瘍を引き起こし、肺に吸い込まれたアスベスト繊維が肺の自浄作用で胃などに飲みこまれた場合、肺癌だけでなく胃癌も引き起こす事が分かりました。問題は、鉛水道管の内部をコーティングしている場合です。水道管の内部をコーティングしているアスベストは浸食や腐食により、水道水に大量に混入するとともに、その水道水を飲んだ人にも肺癌や胃癌を多発させている可能性が指摘されています。超微細なアスベスト繊維は小腸壁を簡単に貫通し、血中に移行。膵臓、肝臓、腸などに蓄積されて、肺癌どころか食道癌、胃癌、腸癌などを発生させる危険性があります。

こうした事からアスベスト水道管を使用している都市水道は、あらゆる癌を発症させる危険性が極めて高いと考えられます。ところが日本の場合、水道水基準として、水道管のアスベストに関して全く規制が設けられていないことです。こうした点から、アスベスト水道管使用の水道水を飲み続けた場合、相当の確率で癌を発症させている可能性があります。

もう一つの問題は、全国規模で見た場合にアスベスト水道管をめぐる実態調査がほとんど行われていない点です。水道行政を司る自治体もほとんど実態調査を行っていません。さらに問題なのは個人の家庭敷地内で使われている水道管にもアスベスト水道管が残存している可能性が高いのに、その実態調査が全く行われていません。日本でアスベスト水道管が使用され始めたのは、1950年代になってからで60年代に入るや、アスベスト水道管の使用が群を抜いて多くなっていきます。つまりこの時期に建てられた民間家屋やマンションにアスベスト水道管が使われている可能性が高いのです。しかし、当の厚生省は国民に対してアスベスト水道管の危険性に対して一切「警告」を発していません。知らないのは国民ばかりです。各水道局のホームページを見ると「朝一番の水は、飲み水以外に使用してください」と注意はしていますが、それよりもっと重大な事実、「水道水に鉛やアスベストが混入している可能性」については、全く触れていません。

さらに、もっとも恐ろしいことは、「日本の水道水」が「ノロウィルス」によって汚染されている可能性が高いことです。「まさか」と思うでしょうが現在、高度に発達した都市水道の浄水機能からすれば、水道水を感染源とする赤痢やコレラなどが蔓延することは、絶対に有り得ないと信じられています。ですが赤痢菌やコレラ菌は細菌であって、ウィルスではありません。現在の都市水道の殺菌機能は塩素投入によるものです。赤痢菌等の細菌類は塩素で死滅させることが可能ですが、細菌類よりはるかに微細なウィルスの場合は、塩素では完全滅菌は不可能です。また塩素では死滅できない病原性微生物としては「クリプト原虫」がよく知られています。日本でこの塩素でも死なない「クリプト原虫」による集団感染が起きたのは、1996年の「越生騒動」です。当時の埼玉県越生町の住民は約1万4千人ほどでしたが、水道水を汚染源とするクリプト原虫で下痢を起こした患者が町民の65%に当たる8800人に達する大騒動が持ち上がった事件です。この騒動を廻って「塩素信仰」を安全な水道水供給の核心に置いていた当時の厚生省の動揺と混乱は大変なものでした。また最近では、塩素でも死なない緑膿菌などの「消毒耐性菌」によるマンション等の集合住宅の貯水槽汚染も問題化しています。塩素では死なない病原菌としては、クリプト原虫に限らず、ノロウィルスなどの小型球形ウィルスなども存在します。これは日本だけの例ではありません。「先進国の水道水がウィルスに汚染されている。」という事実が明らかになったのは1960年代のフランスのパリでした。パリ市の水道水がウィルスに汚染されている事実に驚いたWHOは疫学的調査を徹底的に行いました。その結果、先進国を含め、世界各国の水道水からもウィルスが検出されました。日本とは比べものにならないほど厳しい欧州諸国の都市水道水からこれ程のウィルスが検出されているのです。以来、EU諸国の水道水基準は徹底的に厳しい行政となっています。

それに引きかえ、日本の水道行政は「甘い」の一言に尽きます。適切に処理されたはずの水道水から多数のウィルスが検出された事実は、日本の新聞やTVでは一切報道されません。「都市水道水が病原性ウィルスに汚染されている」「日本の水道水の安全神話」を崩壊させたくない厚生労働省への配慮なのでしょうか。こうした欧米諸国の研究成果さえも一切報道されないとなると、国を挙げての隠蔽体質かと疑いたくなる程です。

前述しましたが、主に欧米では河川の長さが日本よりも長いので、水道水に炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどが日本より多めに溶け込んでいるために硬度が高く、その硬度によって食事の味が変ったり、時には直接飲むと下痢になるといった症状がでることもあり、自分の身を守る必要性から浄水器が普及し進化していきました。しかし、日本は島国で河川も短いため、おおむね軟水で、また明治政府が行った塩素を使用した高度化された急速ろ過方式」の浄水機能が評価され、国民の間に水道水に対する安全神話が出来上がったことから、最近でも浄水器は美味しい水を飲むためのものという感覚が根付いています。

しかし、100年以上の経年とともに状況は大きく変化し、日本でも自分の身は自分で守るために浄水器が必要な時代にもうかなり以前からなっているのが現実です。

今回の大震災の影響で、福島第一・第二原子力発電所の被災により、放射能汚染水が問題になりましたが、それ以外でもわが国の水道水の状況は決して楽観出来る状況ではなくなっています。アメリカでは家庭用の逆浸透膜浄水器の普及率は70%言われています。逆浸透膜式浄水器システムは米国航空宇宙局:NASAで開発され、海水の淡水化や原子力潜水艦の飲料水・人口透析、スペースシャトル内の水のリサイクル、牛乳の濃縮などに利用されています。昨今、問題になっている放射性物質となっているトリハロメタン・亜硝酸窒素・ひ素・ダイオキシン・農薬・化学有害物質・環境ホルモンやクリプトスポリジウムなどを除去出来る唯一の浄水器のシステムと言えます。

それに比べ日本の浄水器の普及率は、名ばかり浄水器も含めて30%位だと推測されます。繰り返しになりますが、本当の日本の水道水事情は、もはや自分の身は自分で守る時代に間違いなく突入しています。むやみに水道水の危険性を煽るつもりは毛頭ありませんが、水道行政の在り方を調べていくと当初考えてもいなかった状況変化が経年とともに起きている事実にどうしても直面します。水は命の源です。今回の放射能汚染水の問題を機に、もう一度水について国民一人一人が真剣に考える良い機会にすべきだと考えます。 

(財界展望6月号参考)

     参照 : 以下に逆浸透膜式浄水器の説明サイトを添付しておきます。
             http://plando.co/purifier/
             http://plando.co/coway/

             http://plando.co/ondine/

             http://plando.co/ozone_filtration/
             
                             
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