終焉に向かう小泉政権と負の遺産
 
         
   
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  磐石と見られていた小泉政権が今年に入り大きく揺らぎ始めている。昨年末からの「耐震強度偽装問題」に加え、今年に入り「ライブドア事件」「米国産牛肉再禁輸」「防衛施設庁談合事件」といわゆる4点セットと言われる問題が相次いで表面化した。面白いのは、これらの問題が毎週続けて必ず週初めに勃発して報道されていることである。2月に入り今週は何も起こらず一段落かと思っていたら7日に秋篠宮妃紀子様のご懐妊報道が紙面を踊った。この問題も「皇室典範改正」を今国会で強行に成立させようと目論んでいた小泉総理には非常に大きな痛手となり、今国会の法案提出を見送らざる得ない状況となって来ている。ついに小泉政権は天にまで見放されようとしているのであろうか。
 ある情報筋によれば、本来は昨年このようなスキャンダルが多数表面化するはずであったらしい。それが、小泉政権の今までに例のない厳しい政敵排除政策とそれを支持した現代の日本国民により、一年据え置かれた形である。しかし、余りにやりすぎた小泉政権の仕打ちに対し、今まで押さえつけられていた志しある政治家や識者が今年に入りはっきりと行動し始めたと言っても過言ではないであろう。
 特に「ライブドア事件」は、小泉政権発足以来日本道路公団問題や日本歯科医師連盟の献金事件など、検察当局の矛先を絶えず旧橋本派を中心とする利権に向けさせ、小泉総理は捜査を上手に利用して政敵を排除してきた。しかし、今回はそれが一転して特捜部は小泉改革の追い風を受けて急成長したネット系ベンチャー企業という新しい利権に初めてメスを入れたと言える。
 そもそも、小泉総理とライブドアの前社長堀江容疑者とは種々の面で共通するところが感じられる。それはなにかと言えば、一つは女性層や若者層の中の余り政治や経済に深く浸透していない層を狙ってパフォーマンスで人気を掴む戦法である。小泉政権にとってはそれは政治自体に余り関心を持っていない浮動票層への集票方式であり、堀江容疑者にとってはネットでの株取引が解禁となって、始めたばかりの素人筋の投資家を集めることである。
 二つ目の共通項として見逃せないのが、アメリカの外国資本との関係である。ニッポン放送買収劇を演じたとき、ライブドアは米大手証券会社リーマンブラザースがライブドアの発行する800億円の新株予約権付社債を引き受けて資金調達した。この買収劇では、ライブドアが35%のニッポン放送株を取得してフジテレビとの和解・業務提携という形にこぎつけ多大な利益を得るが、これは要するにリーマン側が過大な利益を手にしたということに他ならない。即ちリーマン側が日本人や国内企業によって構成されるライブドアの既存の株主の利益を吸い上げ米国に持ち帰ることを意味している。
 これと共通なのが小泉政権の強行した郵政民営化である。規模は比較にならないほどこちらの方が大きい。この件については、私の尊敬する森田実先生が1月に出版された「小泉政権全面批判」の著書の中に詳しく記述されている。詳しくは、そちらを読んでいただければ良く分かると思うが、掻い摘んで言えば、『郵政民営化問題は、本質的には日米関係の問題であり350兆円の金の問題である。これは米国政府の日本政府に対する年次要望書に沿って行われた政策で、日本国民が大変な思いをして貯めた貯金や簡易保険を、小泉政権は「官から民へ」「民間にできることは民間へ」の合言葉で国民を扇動し、日本国民一人ひとりの財産をまとめて外国ファンドの手に委ねる政策を断行した。』と言える。堀江容疑者は自分の会社を総資産額世界一の会社にする野望のため、小泉総理は自分の政権維持の野望のためアメリカを利用し、引き換えに日本人の魂と金を米国に渡してしまったのではなかろうか。
 三番目の共通項が、マスコミとの関係である。堀江容疑者も小泉総理も家庭に入っている女性層やニート・フリーターの多い若者層の支持を掴むために積極的にマスコミに登場してパフォーマンスを繰り返した。また、マスコミも堀江容疑者を「時代の寵児」、小泉総理を「現代の織田信長」と盛んに持ち上げた。そこには、マスコミに対して規模の違いこそあれ外国資本をバックにした多額のマネーが蠢(うごめ)いていたようである。
 このように、堀江容疑者と小泉総理の手法には数多くの共通項が見受けられる。確かに、事件の容疑者と一国の総理を同じ土俵の上に載せて、比較することは如何なものかとお叱りを受けるかもしれないが、私にはどうしてもその手法が同一のように映って仕方が無い。

 小泉政権が終焉に向かい箍が緩み色々なところに隙が出てきたのは間違いなさそうである。マスコミでも「小泉政権の光と影」というような題目の議論が始まっている。最近の報道では、今年3月の大手企業の決算が史上最高の増益予測となっている。一方、国民の格差が広がり「勝ち組、負け組み」という言葉が独り歩きしている。確かに、リストラしてスマートになった企業が高収益を上げるのは悪いことではない。しかし、その反面リストラされた多くの国民が現実として生活の危機に直面しているとしたら果たしてそれでよいのであろうか。多数の負け組みと少数の勝ち組を生み出した、小泉政権の政策は本当に正当なものだったのであろうか。さらに今後の大増税時代を考えると空恐ろしくさえなってくる。
 また、小泉政権とアメリカとの関係はさらに根深く、外資との関係が間接金融だとすれば、日銀が直接に為替介入という形で35兆円とも40兆円とも言われる金をアメリカに流し、その大部分が米国債購入にあてられ、ブッシュ政権が行なった減税政策の原資になったという。要するに小泉総理は、日本国の大切な金をアメリカにただでくれてやることにより政権維持を図ってきたと言っても過言では無い。その半分でも日本国内のために使っていれば、こんなに多くの負け組みは生まれなかったのではないか。
 最後に敢えて一言付け加えると、今まで本質的な意味で額に汗して国を守ってきた中小零細の土木系の建設業者が特に政権維持のための標的とされ、公共事業=悪というレッテルを貼られ、槍玉に上がり、完全に打ちのめされた。自衛隊は軍備で国を守り、建設業者は汗をかいて国に貢献してきた。その建設業者が、多分ここ数年間で何万社にも上る倒産が避けられない状況に追い込まれている。国は見て見ぬ振りをせず、なにか手を打つべきではないのか。建設業者は国を守り、国を繁栄に導く糧である。一度その数が激減すれば、簡単に復元することはあり得ない。小泉政権の負の遺産は今後たくさん出てきそうであるが、今のままでは建設業界がその最大のものとなる危機に直面している。

   
 
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